「変化」を楽しむ｜子どもと大人のための、アートとしての絵本作品
ブルーノ・ムナーリ Bruno Munari 霧の中のサーカス The circus in the mist

ダネーゼから発表され、MoMAのコレクションにも選定されている灰皿CUBOや照明FALKLANDを手掛けたブルーノ・ムナーリ。
1930年代に前衛美術運動「未来派」のアーティストとして活動を始めて以降、グラフィック＆プロダクトデザイナー、アーティスト、教育者、絵本作家と、ジャンルを超えて多方面に活躍しました。

「未来の社会はすでに私たちの中に、つまり子どもたちの中にある」と語るムナーリは子どもの教育に強い関心を持ち、さまざまな絵本を作りました。
ムナーリの絵本の特徴は、言語を介さずともイマジネーションに働きかけ、色や形、質感を通して子どもたちに新鮮な驚きを与えること。
そんなムナーリの絵本は、子どもたちの感受性や自発性を重視する今の時代にあって、より魅力的に映ります。

1968年に企画された絵本「霧の中のサーカス」はムナーリの代表作。
朝霧に包まれたミラノの街を路面電車が通り抜ける風景を、トレーシングペーパーを用いて表現しています。

トレーシングペーパーの重なりの中で、うっすらとだけ見える街の景色。
ページを進めるごとに、まるで霧が薄らいでいくように徐々にその姿を現していきます。
その感覚はまるで霧のミラノを実際に旅行しているかのよう。
それと同時に、めくり終わったページも後ろに積もり重なり、歩んできた道程が霧の中に消えていくかのようです。

そんなトレーシングペーパーの霧の中を進むと、突如現れるのはまばゆいほどにカラフルなサーカス団。
1ページごとに紙の色が変わり、型抜きされた穴からはまた別の色が顔を出します。
紙素材もつるりとしたトレーシングペーパーから色紙に変わり、別世界に連れ出されます。

ページを読み進め、色彩豊かなサーカス団と戯れているうちに、あっという間に家路につく時間に。
ふたたび静けさ漂うトレーシングペーパーの霧の中を帰り、絵本は幕を閉じます。

ページをめくるという行為を通して距離や時間の変化を表現しつつ、紙の質感・色彩の変化が新鮮な驚きを生む「霧の中のサーカス」は、子どものための絵本であり、ムナーリによるアート作品でもあります。
わたしたち大人が読んでも楽しめますし、棚に立てかけておけばインテリアを彩るアートにも。
子どもたちだけでなく、大人も一緒に楽しめるムナーリならではの一冊です。




 

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ブランド : corraini Bruno Munari（Italy）
デザイナー : Bruno Munari｜ブルーノ・ムナーリ
サイズ : 21×21cm
ISBN : 9788887942972（8887942978）
本ページの画像について : (C)Bruno Munari.All rights reserved to Maurizio Corraini s.r.l.-Coutesy Corraini Edizioni
その他 : 英語版（特別日本語訳入り）